久しぶりに飲み会。3年生になったしっかり者の後輩・沢尻くんが幹事だ。いつもこの子が(部の公式行事以外の)旅行とか飲み会とかを企画してくれて、そうじゃなければこういう機会もそうなかっただろうと思う。みんな面倒くさがりだから・・・ありがとう沢尻くん。
鴻野くんはいま実家で、桐生先輩は熱をだしたらしく残念なことに欠席。結局OBがふたり、佐々木くん、沢尻くん、私の5人でした。
それぞれ恋愛事情の報告の場面があって、とくに問題のない私は「なんもないです」と言ったらつまらなかったのか、すぐ「直してほしいところは?」と訊かれる。鴻野くんはよっぽど直すべきところが多く、その彼女である私は苦労が多いだろうと思われているらしい。
「べつにないですよ」と答えたら大げさに「大きい。ローラさんは大きいな!」と言われて困る。
11月にも、飲み会で後輩男子に囲まれて「どこが好きなんですか」「直してほしいところはどこですか」「好きなんですか?」と質問攻めに遭ったのだが、つくづく部内男子からの評判が(男として)低い鴻野くんである。
それでどうも、「ダメな鴻野くんを受け入れている偉いローラさん」という感じで受け止められているようなのだけど、
違うんだよ!前回言い損ねて、今回も言い損ねたけど(飲み会で長い時間話題の中心になるのが苦手だ)、私自身は鴻野くんてすごいなあと思って付き合っているんだよ。ただの部活仲間の男子たちは知らないだけなのだ。鴻野くんのすごさ。人間として、私のほうが、ぜんぜん小さいとよく思う。

それにしても付き合っている相手がそうやって基本的にナメられた感じなのを、真面目に落ち込み考え込んだこともあったけど、ありがたいことに、「あ、この人わかってる」(私よりも、ものごとや人間をわかってる人だなーってこと)と思って信用している人たちが、鴻野くんをきちんと、しかも私が考えるより高く、評価してくれる。葛西先輩、桐生先輩、寺本くん、新2年生のとよたくん(最近鴻野くんといちばんの仲良し)。彼らは、優しく、鋭く、厳しい。もしかしたら私より、鴻野くんを知っているかもしれないとも思う。わかったようなこと言って、私だって、鴻野くんを好きにならなかったら、部活内の多くの男子たちのように、気づかなかったかもしれないと思うのだ。とうの鴻野くんは、ダメダメな評価も、ありがたいきちんとした評価も、あんまり実感が無いようすで、「ぼくローラがいないと生きていけないよ」なんていつも言っている。
ああ、私は、鴻野くんを発見できてよかった。