可愛い後輩男子の佐々木くんと鴻野くんが、部活内における人物相関について語り合ったらしく、
それは、たとえば、佐々木くんから川上さんへの矢印は「ラブ」、川上さんから佐々木くんへの矢印は「ただの後輩」ということになり、鴻野くんと佐々木くん間には「名コンビ」という両矢印が入ることになるのだと思うのだけど、
なぜか彼らは何人かの部員から私への矢印には「先輩」とか「部活仲間」だとか書くのが違う気がして、
「ローラさん」
としたらしい。
いわく、「ローラさんは『ローラさん』て感じですね」。

私はぴんとこなくて、「よく分かんない」と言ったけど、どうやら鴻野くんと佐々木くんは、
「物語の語り手みたいな感じだよね」
とも言い合ったらしく、
「フーン…私登場人物じゃないんだね」
家に帰ってからぼんやりそのことを考えていたら、つまり、私が誰とも「ちゃんと」「関わっていない」ということを見破られたのだ、という気がした。
実際、私が、部内で「ちゃんと」関わり合っている、関わり合いたいと思っている相手というのは、どう考えても桐生先輩だけではないか、ということに最近気がついたところだったのだ。

佐々木くんも鴻野くんもべつにそう意識して言ったわけはないだろうけど、でもつまりそういうことだよなーと思わされてしまった。それにしても佐々木くんはあらゆる場面で構造を読もうとしてくるな。油断ならないな。
最近、自分の他人への距離の取り方が、自分で少し自覚できるようになってきたなあと思う。そのろくでもなさに、気付いてすぐは情けなくて泣けたものだけど、またこれからいろいろ始まるんだな、と思ったら、どきどきわくわくしてきた。ほんとうに、これからだ。