最近、桐生先輩と、佐々木くんと、鴻野くんと、私の、4人でいることが何度かあるなかで、佐々木くんはかわいいし、鴻野くんも好きだけど、そんなかわいい男子たちより、とにかく桐生先輩の気を引きたがっている自分に気がつく。
そのひとの「気を引きたい」という気持ちをあからさまに、誰かを好きになる自分は、久しぶりだと思う。
私は、いつも、自分の好きな相手が私をどう思っているとかそういうことが割とどうでもいい。それが「恋」でなければ、基本的にそうだし、「恋」であっても、その傾向が強い。

私がそのひとのどこかを気に入っていて、「好き!」だと思えればとりあえずそれで満足で、相手の気持ちをどうかしたい、というふうには、あんまり考えることがないのだ。
それだけならまだしも、いざ向こうから好かれる場合も、それがその好きな相手からであっても、ぎょっとして、受け入れ難く思うのだ。
そりゃ、嫌われたり、ないがしろにされたりしたら、悲しいし、そのひとの良さを享受しづらくなるし、それは、嫌だけど。
私はこういった性質が自分の基本であると気づいたとき(それは一年前だった)、とてもショックだった。

こんなんで私、ほんとにひとのこと好きになってるっていえるのかな…?!
ほとんど落ちないとはいえそれなりに「恋」したり、本当に好きな相手だっていたつもりであった分、本当にびっくりして、情けなくて、泣けた。
相手からの見返りを期待しない私の好意は、慎ましいようで、実は全く本当でない、のかもしれないのだ。
もうがっかり。自分にがっかり。
どうりで、誰かが、特に男子が(つまり恋愛感情によって)、私のことを好き、というその「好き」をうまく想像できないわけだ。それゆえそういうときに、今まで思いやりのない態度を取ってきてしまった。

まあ今でもよく分からないけども。つまり自覚しただけで、そのへんはあんまり変わってないけども。
そういう私が、桐生先輩の気を、引きたいと考える、これは、マジだ。何がマジなんだ。私のことを好きになってほしいと積極的に願うこと。さらに態度でも表してほしいと望むこと。こういう気持ちは、高校時代、京ちゃんという女友達にも抱いていた。また同性か。しかもそこは思春期、今よりもっと激しかった。そう、あれ。ああいう「熱情」が「恋」なら、私は、異性に恋したことは、ないかもしれない、と、桐生先輩が佐々木くんと付き合いだしたとき、気づいた。

いや、でもね、むらむらとするのは、異性なんですけどね。困りますね。いや困らないけど。