今週のあたま、部活のOBである先輩の元恋人のNさんが亡くなった、という話を聞いた。

元恋人、といっても、ふたりは今でも特別に仲が良く、まるで家族のようだった。どうして恋人のままでいられなかったのか、私たち後輩にとってはかなり不思議だったけれど、理由は知らない。

遠くに住んでいたNさんと、私は一度だけ会ったことがある。年齢のよく分からない感じの、小さくて可愛い女のひとだった。
先輩とは部の集まりでよく会う。たまにNさんの名前が出た。先輩の口から「Nがさあ」というのを聞くたび、小動物のようなNさんのあのたたずまいを思い出した。先輩の口ぶりからは、いつもNさんへの愛情と友情を感じた。のんきで優しい先輩と、Nさんを、いいふたりだなあ、といつも思った。いつかまた恋人同士になるんじゃないかなあと、いつまにか勝手に期待していた自分に、初めて気がついた。

Nさんは事故で、突然逝ってしまった。びっくりした。
先輩の大好きな人が、もうこの世にいないのだ。
Nさんのことで、先輩の顔が、少し曇るようなことがあったとしても悲しいのに、こんなことってあるんだろうか。
私自身がNさんと親しかったわけではないから、そのことがすごくショックだった。どうしてNさんなんだろう。どうして先輩の大切な人なんだろう。

私はこの、身近で遠い個人の死に、何も言うことができない。先輩の辛さや悲しさは、私に想像出来たり、されたりしたいものではないだろう。
早く先輩の、いちばん辛い時期が過ぎることを勝手に祈るだけだ。こういうことはこんなにもどうしようもない。