鴻野くんに貸してもらった本を二冊読む。
人から借りたり薦められた本を読むときって、自分で選んだ場合と違って、相手の嗜好や思考をつい探りながら読んでしまうなあと改めて思う。
「あ、こういうところをあのひとは好きなのかな」「こういうの許せるのかな」「ここはどう思って読んだのだろう」とか。
鴻野くんに借りたのはいわゆるライトノベルというやつで、ああ鴻野くんのあの時々出る妙な口調はこのへんから採用されたものなのだな、と思った。要するにおたくっぽいっていう…。いや構わないけど。

借りた二冊は両方とも、男と女について深遠重大な問題を孕んでいた(あらゆる物語がそうかもしれないけど)。
好きな異性とからだが入れ変わってしまった男子(しかも一生そのまま)の話なんて、そんなの自殺モノじゃないかと思うんだけど…そのへんの葛藤はほとんどスルー。なるほど「ライト」ノベル…。鴻野くんいわく「あれは、まあ、ラブコメですからね」そうか。そういうの忘れてた。
もうひとつの方はけっこう面白かった。こういうのがあるならライトノベルも捨てたものじゃないなあと思った。今後は読んでいこうかなあ。

主人公の男の子と、ヒロインの女の子の、妙な関係がとても気になる。男と女の、ひとつの理想形だと思うけど。
これを書いているのが男性作家だというのが不思議だった。この主人公のように、可愛くて賢くて自分と少し似ているような女の子と、決して恋愛関係も性愛関係も望むことなく、でも最大限大切に扱おうとする、っていうのは男としては有り得るのかな。それとも、「有り得たい」ってことなのかなあ。どっちにしろ理想だけど、男のひとにとってもそうなのだったら、ちょっと嬉しいなあと思った。