桐生先輩と佐々木くんが付き合い始めて4ヶ月経った。随分カップルらしくなってきたふたりと、一緒にいる機会も増えてきた。
私はもう、ふたりがどんなに仲良さそうにしていても想定以上に心乱れるようなことはなくなったけども、
たとえば佐々木くんが桐生先輩の頭を撫でる、たとえば桐生先輩が佐々木くんの腕に触れる、そういう恋人同士らしいやりとりを見たとき、ほかのひとならば「気を遣う」というしかたで目をそらすだろうそのとき、私もそういうしかたを借りながら、その実、「やっぱりあんまり見たくない」という気持ちで、

目をそらすのだ。
ふたりが体を離すとほっとする。桐生先輩が佐々木くんの悪口を言うとほっとする。
佐々木くんがいくら桐生先輩の話をしようとも、しなかろうとも、こういう心の動きは生まれない、というところから考えても、やっぱり私は、佐々木くんのことだってかなりだいぶ好きなのに、もっとそれ以上に、というか、たぶん違った次元で、桐生先輩を好きなんだ。今でも。
ただ佐々木くんは私にとって異性で、桐生先輩は同性であるわけだから、本来これはそれぞれ逆であればしっくりくる話になるんだろうけど、

まあどうしてか、こうなのだ。
なんにしろ、桐生先輩と佐々木くんが付き合っている、私はふたりを好き、ということに別に私は何の不満もなく、むしろ幸せなのかもしれない。今のままでいられるなら、それがいい。