狭山さんとは最近、お互いの恋の話をたくさんする。
つい最近ふたりでゴハンを食べたときもずーっとだ。半年前の自分たちが見たら呆れることまちがいなし。呆れる前にびっくりするか。
この前、おしゃべりも終盤かと思われたとき、狭山さんが何気なく、
「そういえば鴻野くんちょっと前にねぇ、『最近ローラさんかわいくないですか』って言ってたよ」
と言い出したので、私はほんとうに驚いた。

思わず「はぁーーー!?」と大声をあげ、どういう話だったのかをすごい勢いで質問。
だって…、鴻野くんが私のことを「かわいい」って思ってくれることなんて、いつまでも有り得ないことだと思ってたんだもの!!!それは鴻野くんのストライクゾーンの尋常でない狭さのせいもあるけども、私の外見がそもそも鴻野くんの好みと「真逆」だからしょうがないんだもう、って諦めてたことなんだよ!!

私「ちょ、狭山さんよく考えて。それって鴻野くんの考え方でいうとすごいことだよ。信じられないよ」
狭「は、そっか!そういえばそうだね」
私「えーえーいつ言ってたの」
狭「えーと…半月くらい前かな」
私「早く言ってほしかったよ狭山さん…私にとっては超ネックとなる話だよ!」
狭「いや、ローラちゃんが可愛いのなんて私にとったら当たり前だからなんかスルーしちゃってたよ」
私「いやうん…、鴻野くんはずっと思ってなかったのに、最近になって思ったわけでしょ?具体的にいつだろう…」

狭「それはなんか、ハロウィンのときの、ローラちゃんの猫耳姿がよっぽどかわいかったらしいよ」
私「…えぇ?」
狭「『それからずっとかわいく見えちゃうんですよね。猫耳のせいですかね』とか言ってたよ」
私「…(コスプレきっかけという事実にどう対処するべきか困る私)。なんだそれ…。付けたの私だけじゃないじゃん。ていうか…、いまでも猫耳を脳内補完してるだけなんじゃ」
狭「いや、改めてローラちゃんを『見る』機会になったんだと思うよ。たんに」
私「そーうかなぁー。なんか嫌ぁ、…だけどでも嬉しい、かも…」
狭「そうだよね」

私「でもさあ、あの拡がらないストライクゾーンが、打ち破られたんでしょ。すごい事態だ!!」
狭「うーん、『ローラさん』ていう別の枠が出来たんだよきっと」
私「なるほど?」
狭「ほんとにね、鴻野くんはローラちゃんのこと好きなんだよ」
私「え、わ、分かってる…。でも、外見て大事だったわけじゃん。だから『恋』しなかったんでしょ。その最後の峠を越えちゃったのを、鴻野くんは自分でよく分かってんのかな」
狭「だねぇ」
私「だって『ローラさんの顔が自分の好みにもう少し近かったら好きになってた』って鴻野くんが自分で言ったんだよ?夏ごろ」

狭「それね、沢尻くんとも話したんだけど、鴻野くんのなかで引っ掛かってるのは、『ローラさんに対して性的欲求は無い』ってことなんだよたぶん」
私「はあ?…?あ、そういえばこの前鴻野くんに『恋と性欲ってどう違うんですかねぇ』って訊かれたよ*1。好きだからしたいんじゃないの、とか言っといたけど、なんとも附に落ちてない様子だったね」

狭「沢尻くんが言うには、ほんとに好きな子だと最初はそういう対象で見れないらしいの。沢尻くんも私のこと、付き合うまでは、おかずとか?に絶対出来なかった、って…」
私「…ほほう…」
狭「だから鴻野くんもきっとそうなんだって沢尻くんが言うの。(ローラちゃんの気持ちとか鴻野くんの気持ちとか)何も知らないのに『あのふたりは両想いなんだから』って」
私「『両想い』って!久しぶりに聞いたよ」
狭「たぶん鴻野くんにとってローラちゃんは『好き』とか越えちゃって、もう『大切な人』になっちゃってるんじゃないかと思うよ」

私「それは言い過ぎだよ…」
狭「あ、鴻野くんて、前に女の子好きになったことって一回しかないでしょ」
私「ああ、高校のときの?」
狭「うん。そのときはきっと好みの外見で、ちゃんと性欲の対象だったじゃないかなたぶん」
私「うーん、そういうのが恋だといまも思ってるのかな。分かるけど。仲良くなる前からどきどきしてる、とかねぇ」
狭「でも、いまローラちゃんのこと好きなほうが、ほんとうだと思うんだ」
私「うーん…」
狭「だからね、鴻野くんに何を言ったら動くだろうね」
私「さー…。動くかな」

狭「なんもないの?なんか。ふたりでいるときとか」
私「なんもないっていうか…。この異様な距離の近さは何なんだろうとはつねづね思うけど…。でも最近の、ふたりきりのときにすごい触ってくるのは、どういう意識だと思う?それはさあ、性欲と別なの?」
狭「あー、最近の鴻野くんは、性欲と接触欲を分けて考えてしゃべるよ。前は違ったのに。ああローラちゃんのこと考えてるんだ、って手に取るように」
私「あほか…」


長々と私はなにを…。
なんでみんな日記に恋人のことばっかり書くのか、いまとてもよく分かる。

*1:こんなこと訊かれて私はどうすればよかったんだろう