ごはんを食べようとポンさんとふたりで定食屋の前に立っていたら、後ろから男子ふたりに声を掛けられた。なにやら男子の口からは、
「一緒にごはん食べない?」
という言葉が出てきたのだけども、不慣れな場面のために私が一瞬ぼんやりしていると、ポンさんはとくにためらいもなく「いいですよー」などと答えているので我に返って慌てて慌てる私。
慌てているうちに飲み屋へ行くことになり、「でもお金無いよ」などとぼそぼそ言う私に「おごりだよ。大丈夫だよ」とポンさん(そしてやっぱり男子たちはおごってくれると言う)。後から聞いた話によればポンさんは「誰かごはんおごってくれる人いないかなー」などと考えてたらしく、つまりこの時点で「しめしめ」と思っているわけなのだ。恐ろしい子…!
おそらく男子たちはポンさんの綺麗な横顔と、私の後ろ姿を見て声を掛けたのであろうと思われたが、私は(とくにナンパしてくるような)初対面の男子に「おっ、かわいい」などとは思われない自信があるので、私の正面を見た時点で男子たちの狙いはポンさんのみに定まったのだ、と思った。
なので四人で鍋をつついている途中も、「私はおごってもらう分だけの存在として居ないのに申し訳ないなー」と思っていて(だからと言って楽しいトークができるわけでもなく)、1000円くらいでも払おうかな、とまで考えていたがそれもイタいかと思い出来るだけふつうに「ごちそうさまです」と言いなんとか(私の中で)事無きを得て、一時間ほどの謎の食事会が終わった。

ところでその店へ入る直前鴻野くんのことをきゅうに思い出した。「あっ。知らない男の人とごはんなんか食べたら悪いよなあ」
それは鴻野くんの存在をないがしろにしたわけでも、ナンパに応じることを軽く考えた結果でもなく、たぶん「彼氏がいる」という「身分」であることが、私の人生のなかでまだあまりに短期間なせいで、作られるべき思考回路が出来上がっていなかったからなのだ。「彼氏に悪いから→ナンパには応じないべきだ」っていう。ナンパほとんどされないけどな。

それにしてもポンさんはナンパされて仕方ないよなあ。年々、ますます綺麗になるので見ていて気分が良いです。今日は一日視姦してたよ全身を。試着したワンピース姿も可愛かった。あんまり気安く声を掛けないようにナンパ諸君。

しかしなんか外見のことで以前ほど卑屈にならないのは、鴻野くんが毎日あほのように私を「可愛い」「可愛い」と言うからだ。のろけてみた。