ちなみに春日くんというのは、このところ尾行を趣味とするという後輩男子だ。
まとも、かつどこかトチ狂ってるというか、最近話す機会が増えたのでいろんな話を聞くのだけど、ツボにはまってしょうがない。
春日くんは電車の中などで綺麗なひとを見掛けると、それは男性でも女性でも構わないらしいのだけど、そのひとが降りるまで電車を降りずに観察するのだという。

そのうちの何人かを、電車を降りてからさらに尾けたこともあるらしい。
それは特定の誰かではないし、尾けてどうするということもないらしいのだけど、春日くんから初めてその話を聞いたとき、その趣味はさすがに理解し難く、戸惑った。
だけどたとえばつやつやの黒髪が揺れているさまや、そのひとのたたずまいを、ただ見続けたいというようなことであるようだ。
そう考えれば、うーんまあ、分からなくもないか…?と無理矢理自分のほうに引っ張って、さらに何度か話を聞いていたらごく普通のことのような気がしてきた。んなわけないけど、でも慣れた。

春日くん「このあいだ友達にこの話したらすごく引かれたんですよ」
私「…。引くような相手に話すからいけないんだよ」
春「そいつは子どもを尾けるんですよ」
私「は?」
春「○○塾のカバン背負った小学生とか、ちっちゃい子とか。変ですよね」
私「おいおい尾行癖は同じじゃないか。ていうか子どもはダメー!つか何の友達なの?」
春「中学の同級生です」

そんな春日くんは背の高い、児童文学の好きな20歳の青年だ。妙な間の取り方とか、存在感あるのに消そうとしてる感じとか、私はひそかにかなり面白がっている。要チェック。